この夏の札幌のクラシック音楽界は、祝祭が重なりました。
6月、札幌交響楽団の定期演奏会が600回を数え、その演奏会場である札幌コンサートホールキタラは開館20周年。パシフィック・ミュージック・フェスティバルも開かれています。


「祝祭の音楽」とでも呼ぶべき名曲があります。

ヨーロッパでは、何といってもベートーベンの第9「合唱付き」でしょう。


ベルリンの壁が崩れた1989年、東西ドイツ、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連(当時)の6ヶ国からなる混成オーケストラがバーンスタインの指揮でベルリンの音楽ホールで高々と奏でた演奏は、今でも語り草です。この時、第4楽章は、本来の「フロイデ(Freude)=歓喜」を、「フライハイト(Freiheit)=自由」に変更して唄われたのでした。



さきごろ、ドイツのハンブルクで開かれたG20首脳会合でも、第9の演奏会が開かれ、各国首脳が鑑賞したそうです。

ハンブルクの新しいコンサートホールは「エルプフィルハーモニー」(エルプはエルベ川の語形変化)と呼ばれ、市のランドマークとして、古い倉庫を生かした形で建設されました。そのドキュメンタリーはNHK-BSプレミアムでも放送されましたが、初の予算を大きく上回る巨費がかかって市民の批判を集めた経緯も、きちんと紹介されていました。

困難を乗り切ったキーワードは、世界中の演奏家・音楽ファンが憧れるホールという、いわば「まちおこし効果」だったといいます。首脳をコンサートに招いたメルケル首相の狙いに、加盟国の結束とともに、新ホールのPRもあったことは間違いないでしょう。




「祝祭の音楽」にもどれば、第9のほかにも、マーラーの第2交響曲「復活」や、第8交響曲「千人の交響曲」、オペラではヴェルディの「アイーダ」、宗教曲ではバッハの「マタイ受難曲」などが、「ハレの音楽」としてよく採り上げられます。




こうした大規模な曲が思い浮かぶなかで、札響の第600回定期がモーツァルトの後期3大交響曲だったというのは、見事な独自性だったと言えると思います。また、キタラのバースデイのメーンはベートーベンの第7。選曲も演奏も素敵でした。

来年10月にこけら落としを迎える札幌市民交流プラザの新ホールの演目は「アイーダ」です。今から期待している人も多いことでしょう。


kitara
写真はバースデイ・コンサート開演前のキタラ大ホール