2022年も残り僅かです。新聞各紙では今年の芸術文化活動を回顧する企画が掲載されています。北海道新聞12月20日夕刊のカルチャー面で文化部記者が今年の文化芸能シーンを振り返る記事が掲載されました。道新文化事業社主催事業では、「大型舞台公演が盛況」との見出しで、ミュージカル「ミス・サイゴン」と舞台「千と千尋の神隠し」が取り上げられました。今回のブログではこの1年間に私が観た舞台公演と美術展で印象に残った事業を紹介します。道新文化事業社の主催事業と以前のブログで取り上げたものは除きます。

舞台公演の一つ目は大阪・国立文楽劇場の4月公演「通し狂言義経千本桜 河連法眼館(かわつらほうげんやかた)の段ほか」です。以前、徳島市の阿波人形浄瑠璃やさっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座公演で興味を持ち、一度文楽劇場を訪れたいと思っていました。松竹大歌舞伎でこの演目を観ていたので、話の筋は理解していましたが、舞台が進むうちに人形が本当の人間に見えてきました。桐竹勘十郎さんの人形遣いは人形に「生命」を与えたような感じでした。人形遣いの修業は「足10年、左10年」といわれるそうです。江戸時代から受け継がれてきた伝統芸能、多くの人に見てほしいと私は思います。そして、もっと若い時に見るべきだったと後悔しました。そういえば、10年ほど前に、文楽に対する補助金問題で話題になった市長がいましたね。

 国立文楽劇場DSC_2634
【写真】国立文楽劇場(大阪市中央区日本橋)、4月2日撮影

もう一つ、私が初めて体験したのは大衆演劇です。栗山町のホテルパラダイスヒルズで開催された劇団駒三郎公演です。この劇団は8月に札幌、10月に栗山と各2か月の長期公演(ロングラン)を行いました。知ったのは新聞の折り込みチラシです。温泉入浴料付きで1800円という値段に惹かれました。公演は芝居と舞踊ショーの2部構成、芝居はわかりやすいストーリーで、姑をいじめる嫁とその旦那(次男)が、佐渡金山の出稼ぎから戻った長男と争いつつも最後はハッピーエンドとなる話です。私が持っていた大衆演劇のイメージは松竹映画「男はつらいよ」シリーズに登場する劇団です。主人公の寅さんは旅先で、大衆演劇の劇団と出会い、意気投合し、劇団員から車先生と慕われます。なにか古臭いイメージです。しかし、劇団駒三郎では若い役者が活躍していました。お客さんの盛り上がりは、小劇場と共通する雰囲気も少しありました。ライブの共有感です。ウェブで大衆演劇と検索すると全国にたくさんの劇団が存在し、活動していることがわかりました。気になったのは感染症の影響で、経営的に大変だったと察します。
 大衆演劇DSC_0244
【写真】駒三郎劇団、第2部開始前の様子。11月26日撮影

舞台公演の最後は、ELEVEN NINES「12人の怒れる男」です。札幌演劇シーズン夏の上演作品で、会場はかでるホール。札幌で以前から上演されてきた作品です。
前もってネットでチケットを予約しました。会場に入った瞬間、前方の客席を取り払い、ステージを拡張し、裁判所の会議室と思われる部屋が現れました。ステージ後方にも客席が置かれ、まずこの舞台設定に驚きました。1人ひとりの環境、性格、思想が違う陪審員が登場します。有罪となると思われたところ、1人が疑問を発し無罪を主張します。議論が進み、有罪が徐々に覆され、最後は全員が無罪を支持することになります。12人の陪審員全員が主人公だといっても過言ではありません。出演者は地元在住とのこと、札幌の演劇レベルの高さを証明した公演といえます。

美術展では、「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」(国立新美術館)と「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」(国立西洋美術館)を紹介します。前者は2月下旬、後者は12月上旬に、いずれも出張時の空き時間を利用して鑑賞しました。前者はルネサンス期の作品が充実し、ポスト印象主義のセザンヌあたりまで、西洋美術の流れを網羅していました。フェルメールとカラヴァッジオの名品も展示されていました。

後者は、私にとっては、その続きの西洋美術展のような印象がありました。特に、ピカソのキュビズム時代の作品が、セザンヌ、ブラックとともに展示され、物を多面的な視点で、構造を分析し、平面に表現する現代美術の出発点を再確認しました。驚いたことは写真撮影が認められていたことです。事前予約入場のため、混雑していない展示室では、スマホのシャッター音が気になりました。なお、写真撮影が不可の作品が数点あり、キャプションを見ると国立西洋美術館の所蔵作品でした。北海道新聞社で美術展に携わっていた大先輩から「ピカソとその時代」は是非ものだとメールが届いていたことも付け加えます。

東京の美術展では、時間指定のチケットが当たり前になってきました。時間が空いたら、見に行くことが難しくなっています。国立東京博物館の国宝展は、時間指定チケットは入手できませんでした。

ピカソ_20221226_150511 
【写真】「ピカソとその時代」の会場で購入したグッズ(一筆箋)。

札幌では辻井京雲氏(道立文学館)と藤根凱風氏(スカイホール)の書展が心に残っています。両展とも、北海道教育大学の教授を務め、北海道書壇に大きな足跡を残した書家の遺作展で、展示作品以外にたくさんの優品があると思います。広い会場で、マスコミが取り上げ、多くの人が入場する書展にできなかったものかと感じました。

感染症前の状況には戻っていませんが、2022年は舞台、展示に足を運ぶ機会が増えました。文化芸術の面からも日常の生活が戻りつつあります。道新文化事業社は来年も今年以上に舞台公演、コンサートなど文化芸術を北海道の皆さまに提供していきます。道新プレイガイドで扱っているチケットは道内セイコーマートのマルチコピー機で購入できるようになりました。多くの方が舞台やライブを通して、感動を共有し、喜びを持つことを願っています。

スクリーンショット 2022-12-27 192310
 2023年、全国で話題の舞台「キングダム」。東京、大阪、福岡、札幌で上演。札幌公演・先行発売(抽選)受付中(2023年1月20日まで)。