
紅葉が見ごろです。北海道新聞さっぽろ10区の10月18日号では「札幌で美しい紅葉に出合う」の見出しで市内の紅葉スポットを紹介しています。
【写真】道立旭川美術館付近の紅葉 2019年撮影
この1週間、北海道内では感染者数は増えています。心配です。8月下旬から減少傾向が続いていましたが、出演者や関係者の感染により、ステージ公演が中止となるケースは少なくありません。北海道では、先月24日に札幌文化芸術劇場hitaruで予定されていた山海塾「降りくるもののなかで―とばり」が中止となりました。私は妻と2人分のチケットを購入し、公演を楽しみしていましたが、公演日前日に中止の報が伝わり、がっかりです。札幌公演は28年ぶりで、かねてから山海塾を一度は観たいと思っていたので残念です。それよりも、札幌公演のために準備を進めてきた塾メンバーや関係者の皆さんは本当に大変だったと察します。
さて、今月7日から10日までhitaruでミュージカル『ミス・サイゴン』6回公演を開催しました。ほぼ満席となった全公演、初日のカーテンコールからスタンディング・オベーションで、お客様は待ちに待ったステージを堪能していただいたようです。
私も2公演を観劇しました。市村正親さんを身近に見たのが1番の収穫。初演からエンジニア役を務めて30年、年齢を感じさせません。「世界一のエンジニア」と称賛されるだけあり、素晴らしい演技でした。2番目の収穫は今まで知らなかった新しい才能と出会ったことです。キム役の屋比久知奈(やびく ともな)さんです。恥ずかしい話ですが、私はよく知りませんでしたが、歌唱力、演技力が素晴らしく、引き込まれました。今後の可能性を秘めた才能をもっている方だと断言できます。一緒に見た妻も同意見で、公演後、帰りの電車でスマホ、自宅に帰ってからユーチューブで屋比久さんを検索し、動画を見てみました。私の娘より学年が1年若いとのこと、来年3月には舞台『ジェーン・エア』(東京芸術劇場)に出演することが決まっています。上白石萌音さんとダブルキャストで主人公ジェーン・エアとその友人ヘレン・バーンズを演じるとのことで、大いに期待します。
ステージ全体を通して、二重唱、三重唱のパートが心に響きました。オーケストラの演奏で躍動感が強まります。演奏も含めてオペラのエッセンスを生かしているように感じました。この作品はプッチーニの『蝶々夫人』を基にしているとのことです。昨年2月に見たhitaruオペラプロジェクト『蝶々夫人』を思い出しました。タイトルロールの佐々木アンリさんの歌声も心に残っています。
この公演が実現するまでの道筋を思い出すと胸がつまるものがあったのも事実です。『ミス・サイゴン』は当初2020年7月に開催する予定でした。18年にオープンしたhitaruの1年にわたるオープニングシリーズの最終幕を飾ったミュージカル『レ・ミゼラブル』に続くミュージカル第2弾として、スケジュールに組み込まれていました。そのためには、早い段階から、製作の東宝、会場のhitaruと交渉、調整して、会場を確定します。予算案も同時に進めなければなりません。さらに宣伝計画、チケット発売スケジュールを確定し、19年9月『レ・ミゼラブル』札幌公演に合わせて本格的な告知をスタートさせました。
12月に道新プレイガイド会員先行受付を開始し、年が明けてから一般先行発売を行い、20年2月の段階で全公演のチケットがほぼ完売しました。雪まつりの時期、つまり、新型コロナウイルスの感染者が道内で発生し始めた頃です。感染者数は増加の一方でしたが、その後の急拡大は予想していませんでした。私自身のマスクを入手するのが難しい中、春に開催を予定していたさっぽろ落語まつりなど10公演以上の感染対策を進めるために、万単位のマスク、大量の消毒液と検温器の確保に動いていました。2月下旬から3月にかけての時期です。感染対策を万全にすれば公演はできると信じていました。その後、イベント開催自粛の要請、公演施設の閉鎖により、道新文化事業社が主催するすべての公演は開催できなくなったのです。2020年の『ミス・サイゴン』4月下旬に公演中止の旨を新聞に掲載し、社員はチケット払い戻し業務に追われました。
再度、22年の公演開催が決定し、タイトルに「日本初演30年記念公演」が加わり、今春から抽選先行発売を開始し、チケットは完売しました。19年から22年までの4年がかりの大事業です。そして、日本初演30年を経て、札幌の初上演となりました。『ミス・サイゴン』北海道上陸です。日本では1992年東京・帝国劇場で初演、08年には1000回公演を記録、大掛かりな舞台美術のため、帝国劇場と福岡・博多座でしか開催できませんでしたが、12年の新演出版により、他都市でも公演が可能となりました。仙台、盛岡にも巡回しましたが、札幌公演の実現には時間がかかりました。92年の日本初演から30年、前回の開催告知から4年、ようやく札幌公演が実現したのです。
来年5月には舞台『キングダム』をhitaruで開催します。集英社週刊ヤングジャンプで06年から連載中で、コミックの累計発行部数9,200万冊を超えた「キングダム」は、既にアニメ化や実写版の映画で話題になっています。紀元前3世紀、秦の始皇帝が中国を統一する前段階の物語だそうです。17日発売の『週刊東洋経済』に作者の原泰久さんのインタビューが掲載されるなどビジネス・パーソンにも話題になっていることも事実です。
今回は初の舞台化で、来年2月に東京・帝国座で約1か月のロングラン公演が決定、その後、大阪、福岡を経て5月には札幌で上演します。チケット発売などの情報は道新プレイガイドオンラインストアのホームページなどで発表していきます。ご期待ください。
道新文化事業社はhitaruのオープン後、『レ・ミゼラブル』、『モーツァルト!』、『千と千尋の神隠し』、『ミス・サイゴン』と話題の舞台、ミュージカルを上演してきました。玉置浩二、山崎育三郎らとフルオーケストラの共演コンサート(プレミアム・シンフォニック・コンサート)も行っています。来月は鈴木雅之、ゴスペラーズのコンサートが控えています。
トップクラスの出演者、大掛かりな舞台美術、華麗な衣装、オーケストラによる生演奏、最新設備の劇場で、首都圏や京阪神でしか見ることができなかったステージを北海道の皆さまに感動してもらう機会を作ってきました。
来年の『キングダム』、ご期待してください。
今後も札幌で良質で話題を集める舞台やミュージカルの上演を進めていきます。優れたライブ・エンターテインメントを少しでも多く北海道に上陸させたいのです。公演を実現することで、経済活動を活性化し、道民の感性を豊かにし、来道する出演者や関係者に北海道の魅力を伝える機会をつくる。文化・芸術による地域貢献です。