前回のブログで、国際女性デー(3月8日)に合わせて、過去1年間に発せられた女性蔑視の言葉の中から「ワースト」を決める投票がSNS上で行われているとお話ししました。もし、わたしが投票するなら……。自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が性暴力被害者の支援に関して発した「女性はいくらでも嘘をつけます」を一押しとしましたが、見事的中! ワーストに選ばれましたので、まずはご報告します。


さて、今月3日の参議院予算委員会で、最近あまり見かけない、女性同士の激しいバトルが繰り広げられました。テレビでも報道されたので、みなさんの記憶に残っているでしょう。



丸川・福島
写真1(夫婦別姓を巡り激しいバトルを繰り広げた社民党の福島氏と五輪相の丸川氏)


質問者は社民党の福島瑞穂党首、応戦を迫られたのは橋本聖子氏の後任として、五輪担当相を兼務することになった丸川珠代男女共同参画担当相です。福島氏は、「選択的夫婦別姓制度」をテーマに、その導入に異を唱える丸川氏にその理由をただしたのですが、そのやり取りが実に10回にも及んだことがニュース性を高めたわけです。


丸川氏は同僚の自民党議員とともに今年1月、一部の地方議員に対して、「選択的夫婦別姓」の制度導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう“圧力”をかける文書を送っていたことが明らかになりました。丸川氏は、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言で失脚し、その玉突き人事で五輪担当相に就きました。つまり、ジェンダーの平等性を世界に発信する役割が大いに期待されているわけです。その丸川氏が「選択的夫婦別姓」に反対している! 納得できない! これが福島氏の主張です。


福島氏はさらに、丸川氏が結婚後も旧姓を使っていることも挙げ「矛盾している」と迫ったのです。単純明快で筋が通っています。これに対し、丸川氏は、最後まで正面から答えず、逃げまくりました。丸川氏の姑息な答弁を不快に感じたのは、わたしだけではないでしょう。今回はこの夫婦別姓について、ジェンダー平等の立場から考えてみましょう。


このブログをお読みになっている方の中には独身者、既婚者それぞれいるでしょうが、既婚者の方はとりわけ実感を伴う話だと思います。日本では結婚の際、夫婦が同じ姓を名乗らなければなりません。つまり一方が姓を変えるのです。それは民法第750条に規定されています。条文を確認してみましょう。



民法750条
写真2(民法第750条です。夫婦は婚姻の際、夫または妻の氏を称すると規定します)


現状では、妻が夫の姓に変えるケースが圧倒的多数です。多くの女性にとっては苗字の変更で、不便さや不利益を被ってきたと言われています。みなさんは夫の姓に変える時に、抵抗はありませんでしたか?


ではなぜ、結婚時にどちらかの姓に変えるのでしょう。その理由は曖昧で、日本ではかねて「家族の絆を保ち一体感を醸し出すため」だとか、「離婚や家族の崩壊を防ぐことに寄与する」などと説明されてきました。かつては欧米でも姓の統一を強制した時代がありましたが、現在はアジア諸国を含め「選択的夫婦別姓」が主流です。


日本でも国会で論議が進められてきましたが、ほとんど進展していません。「バトル」を繰り広げた福島氏と丸川氏の攻防はこうした背景を踏まえたものです。丸川氏は女性でありながら夫婦別姓に反対する立場を表明、さらに別姓論議を推進すべき「男女共同参画担当大臣」を務めていることから「そんな考えのあなたは大臣として不適格。失格だ」と食らいついたわけです。


わたしは、日本が夫婦別姓に極めて消極的なのは、家父長制度を伝統とする日本社会の特殊性があると思います。しかし、夫婦同姓か夫婦別姓かを選択できる仕組みを備えることこそが、ジェンダーを尊重する時代の大きな潮流であり、これを躊躇する理由はないと思います。


最高法規の日本国憲法を読み直してみましょう。ジェンダーに関して憲法は第24条で規定しています。第1項と第2項から成り、家族生活における個人の尊重を第1項で、個人の尊厳と両性の平等を第2項で定めています。



憲法24条
写真3(憲法第24条です。2項から成り、男女の平等と個人の尊重をうたっています)


憲法がこう規定していながら、一方で民法は夫婦の「同氏制度」をうたっている。この「矛盾」こそが、ジェンダー差別の根源に潜んでいるのではないかと、わたしは思います。憲法24条を読むたびに、日本女性の地位向上を願った一人のアメリカ人女性がいたことが脳裏に浮かびます。



ゴードン
写真4(女性の名はベアテ・シロタ・ゴードンさん。憲法の草案づくりに参加しました)


みなさんは忘れてしまったでしょうか、その名を……。次回、触れてみたいと思います。