ひと月ほど前に「襲名」について書きましたが、似て非なるものに「改名」があります。
周囲には個人の改名はそれほどありませんが、施設や店の改名にはよく出会います。

どういうときに改名するのか。
単純なのは、施設などの経営主体が変わった場合。経営者の考え方、思いを用者にアピールするには、新しい名前は有効です。

でも、利用者からみると、必ずしも歓迎できるとは限りません。
規模の小さな飲食店なら、「大将」や「マスター」「ママ」とともに店名が変わるのはむしろ自然でしょう。しかし、不特定多数が利用するより大きな規模の施設の名前は、長くなじんできたものであればあるほど、定着に時間を要することになる。

文筆家の伊東ひとみさんは書いています。
<名前は「言葉という木に咲いた花」だと思う。古来積み重ねられてきた人の営みという「土壌」に、言葉という「木」が育ち、そこに名前の「花」が咲く。「花」すなわち名前も言葉の一部であり、人が生み出した歴史や文化に深く根を下ろしている>(2月20日毎日新聞)

イベントの仕事をしていて気になるのは、ホテルの改名です。
札幌市内に限らず、かなり改名の頻度が高い。それだけホテルの経営は難しいということなのでしょうが、短期間に3回、4回と名前が変わったところもあります。
「前の〇〇ホテル」でもイメージがわかず、「もとの○○ホテル」などと、2代、3代前の名前を口に出して確認することもあるほど。
新しい名前が、単純で親しみやすいものであればまだいいのですが、暗号のようなのもたまにあり、正式名称を調べるためにスマホに手を伸ばすことになります。

見慣れた木と花が、ある日突然、花だけさし替えられたような違和感といったらいいでしょうか。こんな改名(命名)は、失敗というべきでしょう。

結婚披露宴などの人生の節目をはじめとして、ホテルは人々のいろんなシーンと結びつきます。そんな思い出に配慮するのもホテルの責任、と言ったら強すぎるでしょうか。

思い出すのはこどもの「キラキラネーム」。最近は減ってきたようです。親の思いは否定しませんが、名前を付けられた本人が一生付き合うことになる、という想像力も求められます。
施設の「名付け親」は、将来はもちろん積み重ねてきた長い歴史にも想いを寄せてほしい。

一方、さまざまな公演に利用されるホールなどでは、企業が命名権を買ってPRに活用する例が一般的になりました。
旧札幌市民会館の跡地に建つ「市民ホール」はこれまで「わくわくホリデーホール」でしたが、4月からスポンサーが変わって「カナモトホール」となります。

多くのイベントでは、相応の前売り期間がありますから、販売中に会場の名前が変わると、券面表記に気をつけなければなりません。
今回の市民ホールの場合は、主催者はチケットの会場名を「市民ホール」とだけ表示しているようです(道新文化事業社には該当する主催イベントはありません)。
名前が変わると、なにかと気苦労が多いのです。

そういえば日本の時間の名前=年号も変わるのですね。