歌舞伎界の大ニュースです。
歌舞伎界では2017年、二代目松本白鸚を松本幸四郎さんが、十代目松本幸四郎を市川染五郎さんが、八代目市川染五郎を松本金太郎さんが襲名する「高麗屋三代襲名記念」が話題になりました。
このうち、白鸚さんと幸四郎さんの襲名披露は札幌でもこの夏、見られます(7月6日札幌市教育文化会館。チケットの前売りは3月開始の予定)。
ファンのみなさんには、楽しみにお待ちいただきたいと思います。
そんななかで発表された団十郎襲名は、特別の意味があります。何と言っても市川団十郎こそは歌舞伎役者を代表する最大の名跡だからです。
ためしに広辞苑など大きな国語辞典で「襲名」を引いてみてください。例文に出てくるのは例外なく「団十郎を襲名する」。ほかの役者の名前ではありません。
海老蔵さんはことし3月の「六本木歌舞伎」(21日から24日札幌のわくわくホリデーホール、完売)にも登場します。
登場したただけで舞台の空気を一変させてしまう、まさに「千両役者」が、いよいよ名実ともに日本の歌舞伎界を引っ張っていく時代になります。
来年5月の襲名後、披露の地方公演は2011年にかけて行われるでしょう。北海道でもぜひ実現させたい。
話は変わりますが、ことし第一回の道新寄席「桂米團治独演会」が1月12日に開かれましたが、これは米團治さんの還暦祝い、芸歴40年とともに「米團治襲名10周年」(それまでの芸名は小米朝でした)を銘打ったものでした。
2回の公演を、多くのお客様が堪能しました。
さて、なぜ名跡を継ぐことを「襲名」というのか。
「襲」の字は、「襲撃」や「急襲」など、なにやら血なまぐさいイメージがついて回ります。
「承名」や「継名」の方が平和的でいいのではないか、なんて思ってしまいます。
そこで「襲」の字を調べてみると「衣」は文字通り衣、「龍」は「シュウ」と読む難漢字の略字だそうで、衣服の重ね合わせの意味。そもそもは争いごとと結びついた字ではないのですね。
漢和辞典でも、第1の意味は「つぐ。うけつぐ」であり、「不意に攻める」はずっと順位の低い意味だとわかりました。
「世襲」「因襲」などの言葉を思い出せば納得がいきます。
歌舞伎でも、落語でも、はたまた相撲の力士や行司でも同じですが―、
大きな名前を後の人が継ぐことで、その人がいっそう精進して立派な存在になっていく。
ファンは先代、先々代などと比べながらその人の成長を見守っていく。
「襲名」は、なかなか味わい深い仕組みだと思います。
欧米にも名を継ぐことはありますが、「Jr =ジュニア」や「〇世」を名前と一体で呼ぶのが普通です。古い名前が新しく生まれ変わるニュアンスは薄いのではないでしょうか。
写真は団十郎襲名の記者会見を報じる道新スポーツ。団十郎の存在の大きさがわかる扱いでした