ことしも残すところわずか。
他のメディアのまねをして、年末回顧でもしてみましょう。
ただし、わたしにできるのは、自分で買って聴いたクラシックのCDベスト選ぐらいになります。
コンサートや舞踊、展覧会でも回顧をやってみたいところですが、主催者として格差をつけるわけにもいかないので、ここは心の中だけにとどめておきます。


①ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」第1幕
 クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルほか
  (輸入盤。ロンドン・フィル自主レーベル)
best3-1


1位はやっぱりワーグナー、すみません。
来年が没後20年になる名指揮者テンシュテットが1991年にロンドンのロイヤル・フェスティバルホールで行った演奏会形式での上演の録音が、ことし日の目を見ました。
歌手は、ドイツオペラ好きにはなじみの大物がそろっています。ジークムントにルネ・コロ、ジークリンデにエファ=マリア・ブントシュー、フンディングにジョン・トムリンソン(演奏時間約1時間、登場人物はこの3人だけです)。
一聴「これはすごい」と驚嘆した名演です。一部評論家も激賞していました。
ワルキューレは、第3幕の「ワルキューレの騎行」が超有名ですが、わたしはこの第1幕こそワーグナーの最高傑作ではと思っています(傑作だからこそこうして単独で演奏会で取り上げられるのです)。チェロ独奏や木管楽器の哀切な旋律が、過酷な運命を別れ別れに生きてきて、ついに出会って愛し合う双子の姉妹、ジークムントとジークリンデの動きや心のひだを描き出します(なんと兄妹相姦! この愛から、神をも恐れぬ英雄ジークフリートが誕生するのです)。幕切れは圧倒的な迫力で盛り上がり、オーケストラの激しい一撃で一気に幕を降ろします。

余談ですが、
CDをより高音質にしたリマスター盤が数多く出て、過去の名演が再び脚光を浴びる時代。今年、ワーグナー関連では、クナッパーツブッシュとフルトヴェングラーの「ニーベルングの指環」全曲(ともに13枚セット)のSACD、カラヤンの同じく「指環」やベームの「トリスタンとイゾルデ」のブルーレイ・オーディオ化などがあって買い直しの誘惑にあっさり負けたので、金銭的にも大変でした。




②ブラームス ピアノ小品集
 アルカディ・ヴォロドス
  (輸入盤、SONY)
best3-2


ロシアのピアニスト、ヴォロドスは、この国の演奏家らしく、超絶技巧で売り出した人のようですが、こんな渋い曲を選んで録音するのですから、本人は「技巧派」のレッテルを嫌っているのではないでしょうか。
それを証明するように、彼はモンポウ(スペインの作曲家)の小品集もことしリリースしました。
いずれも美しいピアノの音色が夢見るように広がります。
ブラームス晩年の「間奏曲」など数多くの小品は、もっと多くの人に聴いてもらいたいと心から思います。




③武満徹 管弦楽曲集(2枚組)
 山田和樹指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
  (国内盤。EXTON)
best3-3


いま、もっとも注目している指揮者の一人が山田和樹です。武満作品にも意欲的に取り組んでおり、2013年に東京混声合唱団と合唱曲集を出したのに続いて、2枚組のオーケストラ曲集の登場となりました。
これらは、3年がかりで行われたマーラーの交響曲連続演奏の際に、組み合わせの曲としてプログラムを飾ったライヴ録音の集成です。
マーラーと武満で一夜の演奏会を構成するという発想自体、ほかの指揮者にはなしえないことのように思います。それに高い水準でこたえた日フィルも偉い。


う~ん、あまり一般的とはいえないリストになりましたね。すみません。
すでにブログで書いたように、わたしは「中古大好き」人間で、ことし購入したCDも大半は中古盤でした。よく聞き返す盤はほかにもありますが、過去のリリースをいま取り上げてもしようがあるまい、ということで、今年発売されたものの中から選んでみました。
あえて選ばなかった新譜もそこそこありますが、一般的には向きそうもないものが多いので(性格を疑われそうなので)、この辺でやめておきます。