音楽ファンや演奏家が集う札幌のレストラン、「円山カンタービレ」で楽しい催しがありました。

ミニオペラ「カルメン」。

ビゼーの名作、カルメン(全4幕3時間程度)を「いいとこどり」して40分に圧縮、演奏もバイオリン、チェロ、ピアノの3人、歌手は4人だけという曲小編成のオペラです。


演奏したのは
札響の大平まゆみさん(バイオリン、コンサートマスター)、
荒木均さん(チェロ)、
ピアノは伊藤千尋さん。

歌手たちは、
題名役カルメンは松田久美さん(札幌室内歌劇場)、
カルメンに惚れる伍長ホセは岡崎正二さん(北海道二期会)、
ホセの許婚者ミカエラは亀谷泰子さん(LCアルモーニカ)、
ホセの恋敵となる闘牛士エスカミーリョは中島聡章さん(札幌室内歌劇場)。
ミニオペラ


会場は20人強で満員となる広さ。音楽好きのためにステージが常設されてはいますが、オペラのセットはなく、客席の間の通路をも有効に使って、歌い手たちが歌い演技します。簡略ではありますが、衣装も小道具も工夫されていました。


当日は昼の部、午後の部、夜の部の3公演。音楽ファンで各部ともほぼ満員。東京から音楽評論家の東条碩夫さんも駆けつけておられました。


これは単発の催しではありません。大平さんらはミニオペラ連続上演のための団体「オペラファクトリー北海道」を組織、「カルメン」の再演や、次回作「トスカ」(プッチーニ作曲)の上演準備も進めています。


大平さんは、この試みの意図をこう訴えます。

「来年秋、札幌文化芸術劇場hitaruがオープンします。これからどんな音楽文化を生み出し、発信していくのか。それは単に行政の課題にとどまらず、音楽文化にかかわる者にとって大きなテーマだとわたしたちは考えています
…ささやかな取り組みですが、いずれは志を同じくする団体や行政とも手を携え、新たな音楽文化を発信していきたいと願っています」

(詳しくはオペラファクトリー北海道のホームページ https://arakicello.wixsite.com/hokkaido-opera をご覧ください)。


出演者を見ればわかる通り、北海道のオペラ団体の枠を超えて集まった有志が真剣に、しかし実に楽しそうに取り組んでいるのがこの試みなのです。


札幌では、オペラの本格的舞台に接する機会は多くはありません。
難しそう、チケットが高い、上演時間が長い…。いろんなハードルがあり、愛好家が増えないためにますます上演機会も減っていく悪循環です。
しかし、入門者向けだからといって手を抜いた上演では、その本来の魅力は伝わりません。


だからこそ、大平さんたちの取り組みは貴重です。
わたしも大好きなオペラ・カルメン。今回のミニ版は、その魅力のエッセンスをしっかりと感じ取れるものでした。
映像ソフトで一流の上演を家庭のテレビでも見られることは確かですが、目の前で(本当に歌い手さんと体が擦れ合うくらいの目の前なのです!)繰り広げられる歌や演技は、圧倒的。
それに加えて、終演後には出演者のみなさんと交流もできるのですから、こんな貴重な体験はそうそうできません。

今後の展開に注目し、応援していきたいと思っています。



写真は夜の部の公演を終えて晴れやかな表情の出演者たち