芸術の秋に、世界経済や歴史とアートとのかかわりを論じたすごい一冊に出会いました。

<コレクションと資本主義―「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる>。角川新書です。
世界経済の歴史を分析し、資本主義の終わりを説いているエコノミストの水野和夫さんと、東京で画廊を経営する山本豊津(やまもと・ほづ)さんの対談です。



どういうふうにすごいかって?



実用には役立たない絵画になぜ、目の飛び出るような値段がつくのか、を真剣に論じ、その現象を経済の中に位置づけています。
また、ヨーロッパにおける美術館や博物館の役割。それは文化財を保存・展示するという「ありがたい」ものではなく、自らの価値に合わせて略奪物を整理してみせ、自らの価値観を押し広げるという「暴力性」を持ったものであることを明らかにしています。


まだまだあります。とても一口では言えません。興味のある人はぜひ、新書をご自分でお読みください。

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この秋、人気を集めたゴッホ展に足を運ばれた人も多いでしょう。
海外旅行で有名な美術館や博物館を実際に見てこられた人もいらっしゃるでしょう。
いずれにしても、目からうろこが落ちますよ。


ところで「収集」と「蒐集」の違いについて。
水野さんは、ただ集めるのが「収集」、自分たちの価値基準に応じて分類し、選別しながらあつめるのが「蒐集」だと定義します。
そして、米国の批評家スーザン・ゾンタークの次の言葉を引用してみせてもくれるのです。
「蒐集家が必要とするのはまさしく過剰、飽満、過多」だと。


「蒐集」はまさに、資本主義の本質であるわけですね。


無意味な「おち」をつけたい衝動にかられます。わたしのCD「蒐集」。貧弱なものであはありますが、家人にはこう言われるのです。



「過剰、飽満、過多じゃない?」