2019年02月

お名前は?

ひと月ほど前に「襲名」について書きましたが、似て非なるものに「改名」があります。
周囲には個人の改名はそれほどありませんが、施設や店の改名にはよく出会います。

どういうときに改名するのか。
単純なのは、施設などの経営主体が変わった場合。経営者の考え方、思いを用者にアピールするには、新しい名前は有効です。

でも、利用者からみると、必ずしも歓迎できるとは限りません。
規模の小さな飲食店なら、「大将」や「マスター」「ママ」とともに店名が変わるのはむしろ自然でしょう。しかし、不特定多数が利用するより大きな規模の施設の名前は、長くなじんできたものであればあるほど、定着に時間を要することになる。

文筆家の伊東ひとみさんは書いています。
<名前は「言葉という木に咲いた花」だと思う。古来積み重ねられてきた人の営みという「土壌」に、言葉という「木」が育ち、そこに名前の「花」が咲く。「花」すなわち名前も言葉の一部であり、人が生み出した歴史や文化に深く根を下ろしている>(2月20日毎日新聞)

イベントの仕事をしていて気になるのは、ホテルの改名です。
札幌市内に限らず、かなり改名の頻度が高い。それだけホテルの経営は難しいということなのでしょうが、短期間に3回、4回と名前が変わったところもあります。
「前の〇〇ホテル」でもイメージがわかず、「もとの○○ホテル」などと、2代、3代前の名前を口に出して確認することもあるほど。
新しい名前が、単純で親しみやすいものであればまだいいのですが、暗号のようなのもたまにあり、正式名称を調べるためにスマホに手を伸ばすことになります。

見慣れた木と花が、ある日突然、花だけさし替えられたような違和感といったらいいでしょうか。こんな改名(命名)は、失敗というべきでしょう。

結婚披露宴などの人生の節目をはじめとして、ホテルは人々のいろんなシーンと結びつきます。そんな思い出に配慮するのもホテルの責任、と言ったら強すぎるでしょうか。

思い出すのはこどもの「キラキラネーム」。最近は減ってきたようです。親の思いは否定しませんが、名前を付けられた本人が一生付き合うことになる、という想像力も求められます。
施設の「名付け親」は、将来はもちろん積み重ねてきた長い歴史にも想いを寄せてほしい。

一方、さまざまな公演に利用されるホールなどでは、企業が命名権を買ってPRに活用する例が一般的になりました。
旧札幌市民会館の跡地に建つ「市民ホール」はこれまで「わくわくホリデーホール」でしたが、4月からスポンサーが変わって「カナモトホール」となります。

多くのイベントでは、相応の前売り期間がありますから、販売中に会場の名前が変わると、券面表記に気をつけなければなりません。
今回の市民ホールの場合は、主催者はチケットの会場名を「市民ホール」とだけ表示しているようです(道新文化事業社には該当する主催イベントはありません)。
名前が変わると、なにかと気苦労が多いのです。

そういえば日本の時間の名前=年号も変わるのですね。

彩りの祭典

70回さっぽろ雪まつりが開かれています。

北海道新聞グループの一員として、道新文化事業社も運営にかかわっていますが、昨年までの2丁目から変わって、ことしは5丁目の東側が担当です。

 

ここは今回のまつりの中でも注目の大雪像「北海道を駆ける! サラブレッド」がメーンです。前年までの「氷の広場」は小ぢんまりしていましたので、ちょっと<出世>した感じ。

 
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けさ2月7日の北海道新聞札幌版でも紹介されていますが、この雪像は夜になると「光と音のショー」のスクリーンになります。サラブレッドが駆け出し、背景が動いたりします。

プロジェクションマピングと呼ばれる技術が使われているのです。

 

新聞でも紹介の通り、今年の雪まつりは5つの雪像で映像投影が行われています。もはや夜の雪像は、単なるライトアップでは物足りなくなっちゃってる。

ありがたいことに、「サラブレッド」は、なかでも評判がいいようです。

 

雪まつりといえば、かつては「白い祭典」などと枕詞がつく行事でしたが、すっかり「彩りの祭典」になっているのですね。

 

「雪まつり、しばらく行ってないな」という札幌市民のみなさんも、ぜひ暗くなってからのひとときを楽しみにお出かけください。

 

 

 

写真はカラフルに動き出すサラブレッドの大雪像

買い負け・のようなもの

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前回に引き続いて、こんどは、東京から遠く離れた地方の一オペラファンのわたしが個人的に歯がゆく感じていることを、この機会に書きます。話は急に小さくなりますが。

生のオペラに触れる機会を頻繁には持てない愛好家にとっては、映像ソフトを手に入れて家庭のテレビで見ることが、楽しみのひとつになります。
それなのに、日本語字幕のないソフトがまだまだ多いのです。アジアの国だから仕方がない、と言うなかれ。中国語や韓国語は入っているのに日本語がないというソフトを、わたしは何枚も持っています。

これは「国力」の衰えを示すのではないか。

メディアがビデオテープだった時代は、国内の音楽ソフト制作会社が日本語字幕を入れた国内向け専用のソフトを販売していました。
デジタルの時代になると、メディア(DVD、そしてブルーレイ)にはより多くの情報が入れられます。初めから多言語の字幕を入れ、視聴者が選択して表示させる国際統一版の時代です。各国版を別々につくるより低コストであることは言うまでもありません。
コンテンツの大半を押さえている欧州のメーカーは、英仏独語はほぼすべてのソフトで採用していますし、スペイン語、イタリア語もかなり多くなっています。なかにはスペインから独立を目指す動きのあるカタロニア語を選べるソフトもあります。

では、それ以外は。作る側は当然、採算性を頭に入れるでしょうが、売る以前の協賛者の存在も大きいのだと思います。
日本語字幕が少ないことは、日本の「国力」の衰えの現れに他ならないのでしょう。

試しに、クラシック音楽ソフトが充実しているHMVのホームページをデータベース代わりにして、オペラ作品の字幕について2015年以降を調べてみました。

2015年は総数81タイトルのうち、何らかの字幕が入っているものは71。
このうち、日本語字幕入りは26しかありませんでした(日本語字幕のみの国内盤を含む)。割合にすると全体の32%です。
日本語字幕がない45タイトルのうち、欧州各国語のみは28、中韓も付いているのは17。これほどの作品で漢字やハングルの字幕は選べるのに日本語はない。
これは我慢できる差ではないでしょう。

ただ、事態は年々改善されています。
翌2016年は総数75タイトルのうち、日本語字幕入りは33(44%)、中韓があって日本語がないのは7。
2017年は総数65、日本語字幕は48(74%)、中韓のみとの差は3にまで縮まりました。
昨2018年も総数61タイトルのうち、日本語字幕は44(72%)に入っており、中韓はあるのに日本語がないものはやはり3タイトルでした。

ここは日本語字幕100%を目指して世論を盛り上げたいものです。
作品をよく知っているとしても、また、語学に堪能であったとしても、母国語の字幕で確認できることは、オペラの理解度を大きく引き上げるからです(作品によっては、字幕の文句で泣いてしまうこともあるのです、ほんとの話)。

作品による偏りもあるようです。わたしの愛するドイツ=オーストリア系のオペラは日本語字幕なしが多い、と見えるのは、決してヒガ目のせいではないと思います。
個人的には、これを優先的になんとかしてほしい。

話をもう少し広げますと、
音声のみのCDソフトの日本語対訳も減っています。
オペラの国内盤制作は総数がめっきり減りました。再発売もので対訳がついていないケースも増えました。
「読むオペラ」などと称して、対訳本が出版されてもいますが、ソフトに加えて書籍までもとなると、一般の愛好家には負担が大きい。
重宝するのは、無料対訳ページ「オペラ対訳プロジェクト」でしょうか。
https://www31.atwiki.jp/oper/
一般的な作品はかなり網羅されています。
時間ができたら、一般的でないドイツものオペラ(ツェムリンスキーなど)の対訳に挑戦し、このページに投稿する、というのがわたしの「でっかい夢」です。

いつか技術が進歩したら、映像に合わせて投稿字幕が流れるようなネット放送もできるかもしれません。
そのためには、愛好家がもっと増えなえればならない、となると結局、「鶏が先か、卵が先か」という話になってしまいますが。


写真は所有映像ソフトのうち、中韓はあるのに日本語字幕のないものの一部

買い負け


世界が魚介類の魅力に開眼して水産物の争奪戦となり、日本の買い付け能力が追い付かなくなる。
この「買い負け」と呼ばれる現象が注目されだして、もう10数年になります。



同じようなことが文化の面でも起こっているのではないか。



そんなことを感じさせる動きがあります。




公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS、東京)が企業に呼び掛けている<オペラ・フェスティバル>賛助会員入会勧誘です。

欧州の有名歌劇場のソリスト、オーケストラ、合唱団、バレエ団を、舞台装置などとともにそっくり招いて日本のファンに楽しんでもらう「引っ越し公演」。<オペラ・フェスティバル>(NBSと日経新聞主催)では、1996年以来、ウィーン国立歌劇場や英国ロイヤル・オペラ、ミラノ・スカラ座など、世界の一流どころの引っ越し公演を、間を空けず定期的に開いてきました。
招かれる側も、東京の市場の大きさ、観客聴衆の質の高さを高く評価しています。日本びいきのアーティストを数え上げればきりがないほどです。

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もちろん、NBS以外の招聘会社が開く引っ越し公演もありますが、巨額の費用がかかるこうした催しをここまで頻繁に開けるのはNBSならでは、といっていいでしょう。


その様相が変わってきた、というのです。


「法人賛助会 ご入会のお願い」には、以下のようなことが書かれています。

近年、アジアの近隣諸国でも次々に立派なオペラハウスが建ち、国を挙げて引っ越し公演に取り組む例が増えていること。
欧州のオペラ団体は国立や州立などの公的機関であり、引っ越し公演を国際文化交流事業と位置付けていること。
こうした中では、「先進国」の招聘団体として中心を担ってきたNBSといえどもお株を奪われかねないこと。

これは単にNBSの経営問題にはとどまらない問題を含んでいるでしょう。一部のオペラファンの不便というだけの問題でもないですし、大型公演の周辺で成り立つサービス産業だけの問題でもないでしょう。

あまり「競争」を強調したくはありませんが、
東京や大阪など主要都市が、そうした団体の公演をしばしば開催する文化度の高い都市であることは、都市として世界に伍していくために不可欠でしょう。
また国民・市民が海外の一流文化に触れておくことは、国際化するビジネスでも日本のパワーを後押しするに違いない。
この先、優秀な海外人材にもっと幅広く日本で働いてもらおうというのであれば、その環境整備としても、文化をないがしろにはできません。


おいしい魚介類が食べられなくなる「買い負け」も困りますが、これも同じ程度に深刻な事態だ、とは言えないでしょうか。


NBSや招聘団体は、国がもっと文化に力を入れてくれるよう、要請活動を行うとともに、この「お願い」では、民間企業の後押しを必死に訴えているのです。

札幌文化芸術劇場(hitaru)を活用していかなければならない札幌にとっても、一緒に考えていかなければならない問題ではないでしょうか。


写真はNBSが招聘した世界の一流オペラ「引っ越し公演」のプログラム

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