サッカーとホッケーの違いは、ギターとヴァイオリンのようなもの。



と言うと、何のこと? と思うかもしれません。


人の体と目的の物との間に何かがはさまっているか、いないかの違いです。
球を足で蹴る、弦を指で弾く「直接」に対し、球や弦がスティックや弓の先にある「間接」。


どっちが優れているかという問題ではないにせよ、間接の方があとに生まれたもので、パフォーマンスは良い、と言えそうです。野球で言えば、どんな強肩選手でもバットを介したホームランのように遠くまでボールを投げることはできません。


楽器の世界では、弓で間接的に弦をこするヴァイオリンやチェロなどの楽器群(ヴィオール属)だけが、それらのために書かれた名曲とともに近代以降世界中に普及、首座を占めています。


政治学、文学、音楽と多方面の評論で活躍する片山杜秀氏は、ヴィオール属全盛の背景に近代ヨーロッパ人の精神構造があると述べています。
「そう、その楽器の発達史は、ルネサンスから啓蒙と科学の近代に向かう過程、それすなわち万能の神に人間が成り代わり神殺しを行ってゆく歴史とまったく雁行しているのだ」(「音盤博物誌」アルテスパブリッシング)。

深い分析だと思います。


難しい話はさておいて、ヴィオール属の中でも人間の声域に一番近いチェロを使って、これまで誰も響かせたことのない音楽を奏でる「2 Cellos」 が、2年ぶりに札幌公演を行いました(5月19日ニトリ文化ホール)。



今回は弦楽オーケストラを伴ってチェロ本来の深々とした音色も聞かせてくれましたが、後半は例によって電気増幅の技術を駆使したロックミュージックでした。会場総立ちで大いに盛り上がりました。

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※写真は5月18日函館公演の様子


これを見て、なぜギター(直接)ではなくてチェロ(間接)なのだ? などというのは野暮というものでしょう。