“お堅い”クラシック以外のコンサートは今日、電気増幅が一般化しています。小規模なライブハウスなどでは、マイク、スピーカーを使わなくても十分に音は伝わる。音量過剰を感じることが少なくないのです。声でも楽器でも、発生源から空気の震えが直接伝わってくる感じが、ライブならではだと思うのですが。



「いい酒といい女は迎えに行け」という言葉があります。もとはカクテルの楽しみ方を教えたことばだそうです。




名人バーテンダーは、度数の高いカクテルは漏斗に脚を付けたようなグラスにあふれるぎりぎりの分量をぴたりと決めてくれます。こぼさずに持ち上げて口に 運ぶのは難しい。
一見、行儀が悪そうですが、口のほうをグラスに運んで一口目を味わうのは、むしろ礼儀にかなう。いい酒を「迎えに行く」というわけです。
「いい女」については解説は不要ですよね。いや、「好きな相手」と言い換えたほうが適切でした。



音楽も同じところがあると思うのです。



大音響を体全体で浴びるのもいいですが、かすかな音のニュアンスを求めて耳をそばだてるのはまた格別です。いい音、いい音楽を「迎えに行く」わけです。
前々回のブログで武満徹さんの「小さい音が好き」という言葉を紹介しましたが、同じことを言っていると思います。


昨年、フラメンコギターの沖仁さんのコンサート(道新ホール)では、「生音コーナー」という時間帯があって、沖さんの魔法のような音色をじっくりと味わうことができました。


26日にかでるホール(北2西7)で開く柏木広樹チェロ・アコースティック・コンサートは、文字通り全編生音です。楽しいトークとともに柏木さんのチェロ、NAOTOさんのバイオリン、榊原大さんピアノの、皮膚ではなく心に届く音色をぜひお楽しみいただきたい。
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皆さんを「お迎えに行く」ことはできませんが…。


写真は柏木広樹チェロ・アコースティック・コンサートのお知らせ