立花隆さんの大著「武満徹・音楽創造への旅」(文芸春秋)をきっかけに、もう少し書きます。ただし本質ではなく、とっても周辺的な話題を2つ。


 世界を驚嘆させた琵琶と尺八とオーケストラによる「ノヴェンバー・ステップス」は、武満さんの出世作といっていい作品です。立花さんの本でも多くページが割かれています。

 印象的なのは、同曲になくてはならない琵琶奏者の鶴田錦史さん(1911年滝川市生まれ。95年没)が女性だったという事実と、エピソードの数々です。カナダ・トロントの空港で女子トイレに入って行って大騒ぎになったとか、NHKの有名ディレクターも1年間気が付かなかったとか。


 ぼくも、テレビ映像で拝見しただけではありますが、鶴田さんは男だとばかり思っており、告白しますが、この本で事実を初めて知りました。見事な男装ぶりだったとはいえ、気づくのがいかにも遅すぎ。「不明を恥じる」どころではありません。


 考えてみれば、人は誰かと向き合ったとき性別は外見で判断し、それを疑うことはしないものです。でも、あえて確認することも必要なのかも。いやいや、それはセクハラに当たるのか、などと考えがめぐります。



 話題をもうひとつ。武満さん死去を報じたNHK夜7時のニュースのお粗末さです。

 

アナウンサーはこう言ったというのです。
 

 

 「NHKの連続ドラマ“夢千代日記”の作曲者であった武満徹さんがお亡くなりになりました。武満さんは昨年のNHK放送文化賞の受賞者でもあります」


 

 これが世界中の音楽家の尊敬を集め、歴史に残る作品を多く遺した作曲家の死に捧げる言葉でしょうか。開いた口がふさがりません。
 

 NHKには優れたドキュメンタリーも多いのですが、ニュースでは今でも類似の場面に遭遇します。自局の宣伝過剰を少しは恥じるべきだ、と訴えたい。


 無意味な立腹は抑えましょう。こんなときは石川セリさんのCD「翼 武満徹ポップ・ソングス」が心を落ち着かせてくれます。

 


石川セリ

写真は筆者が愛聴している石川セリ「翼 武満徹ポップ・ソングス」