昨年2016年の国内の映画興行収入が過去最高の2355億円に上ったそうです(1月25日北海道新聞朝刊)。アニメ「君の名は。」のヒットが大きかった、と解説されています。
一方、同じ日の道新には、アメリカのアカデミー賞候補作発表のニュースも載っています。興行成績では褒められた「君の…」は、こちらの候補からは外れ、明暗を描きました。
ちょっと遡ると、国内のネット上でも論争が起こっていました。伝統ある日本の「キネマ旬報(キネ旬)」の年間上映作ベスト10のランキングに「君の…」が入らなかったからです(http://www.kinenote.com/main/kinejun_best10/japan.aspx)。
キネ旬の日本映画1位になったのは「この世界の片隅に」でした。「君の…」ファンからこの決定に激しい反応が起こりました。
ここで映画の作品論には入りません。面白いと思ったのは、2つの映画の狙いや表現手法の違いが、ファンをもくっきりと分けているように見受けられることです。
週刊誌にはこんな分析も登場しました。
「(非難は)内容を論じるのではなく、共感しない者への悪罵と攻撃を並べ立てる話法が目につく」「(「君の…」ファンと「この世界…」ファンとでは)たぶん感動する回路が違うのだ」(サンデー毎日1月29日号「トランプはシン・ゴジラである!」)
娯楽性を追求した「君の…」と、濃やかに庶民の生活を描いた「この世界…」。優劣を付けられるものではないでしょうが、政治の世界で今はやりの「ポピュリズム」論争を思わせる対立が起きたことは、何やら示唆的です。
さて、粗野としか言いようのない言動を繰り返す米国の最高指導者が、矢継ぎ早に政策を実行に移し始めました。それに拍手を送る国民ももちろん多い。
しかし、ヨーロッパ映画に比べ、その単純明快さに辟易とすることさえあるハリウッド映画の国で、権力者に対する抗議が粘り強く繰り広げられていることには希望も感じます。