魔法を解く

「かえるの王様」という童話があります。

ある王女が泉に金の鞠を落としてしまった。カエルが現れ「わたしを友達にして、同じ皿で食事をし同じベッドで寝かせてくれるなら、鞠を取ってきてあげよう」と申し出る。王女はいったんは同意して鞠を取り戻すが、気味悪がって約束を破る。しかし、事情を聴いた父王は約束を守るよう命令。王女はカエルと食事を共にし、いよいよ寝室へ。しかし、どうしても一緒に寝ることができず、カエルを掴んで壁にたたきつける。と、カエルにかけられた魔法が解けて立派な王様が現れ、二人はめでたく結婚して末永く幸せに暮らす、というあらすじです。


どうにも腑に落ちません。自分を嫌い続け、命まで危険にさらす女性に、なぜカエル王は求婚したのか。そんな結婚がうまくいくものなのか。
と思っていたら、別バージョンがあることがわかりました。王女はカエルにキスをし、それで魔法が解けたというのです。



これなら納得できますね。



キスが魔法を解くという物語はほかにもあります。わたしの得意分野であるワーグナー作品では、英雄ジークフリートが、眠るブリュンヒルデ(ワルキューレの長女)にキスして目覚めさせます(楽劇「ジークフリート」)。


そして、何といってもなじみ深いのが、「白雪姫」と「ねむれる森の美女」でしょう。
ただ、白雪姫には、毒のリンゴを吐き出すのをきっかけに眠りから覚めるという別バージョンもありますが。



25日には札幌・わくわくホリデーホールで、バレエ「ねむれる森の美女」の公演があります。子供たちが楽しんで見られるよう上演時間を短縮し、ストーリーにも手を加えたもの。世界的に高く評価されている東京バレエ団が踊ります。


まだ席に余裕があります。親子連れはもちろん、カップルや大人おひとり様でも楽しめる内容。本物のバレエと楽しい舞台に触れるのはどうでしょう。


ねむれる森

写真はバレエの名場面(PRチラシより)
Photos:Kiyonori Hasegawa

ウマはウマでも

「なぜシマウマは家畜にならなかったのか」


多方面にわたる研究と多くの著作で知られるジャレド・ダイヤモンド氏の名著「銃・病原菌・鉄」に、こんなタイトルの章がありました(上巻第9章)。

人間は、動物を飼いならすことによって、その力を活用し食料にもして、文明を発達させてきました。

この本によると、家畜候補になりうる大型草食動物148種ありますが、家畜にできたのは14種にとどまるといいます。エランドやヘラジカなど、近代になっても新しく家畜化する研究がおこなわれてきましたが、どうしても成功しなかったというのです。
シマウマの場合は、人に噛みついたら絶対に離さない習性がある(動物監視員で噛まれてけがをした人は、トラに噛まれた人より多い)。投げ縄を避けるのがうまくて鞍を付けられない―。家畜にならなかった理由がいろいろ挙げられています。

この本は優れたノンフィクションとして米ピュリツァー賞受賞。日本では草思社文庫(上・下)として現在も売れ続けています。



さて、5年ぶりに札幌で開かれている木下大サーカス。海外のパフォーマーも加わってハラハラドキドキの技をみせてくれますが、ライオンやゾウ、そして問題のシマウマの動物芸も人気です。

牙をむきだしにするライオンや巨大なゾウに比べれば、シマウマはかわいい。でも、ピュリツァー賞受賞作をたまたま読んでしまったわたしは、シマウマのときに一番体がこわばります。



6月に始まった公演は早くも1か月を過ぎ、8月29日の千秋楽までほぼ折り返しになりました。
もちろん、シマウマもほかの動物やパフォーマーたちも、百発百中の成功を見せてくれています。
その背景に、どれほどの困難で息の長い訓練があったことか。想像することもできません。

観覧チケットは道新プレイガイドで承っています。夏休みを前にして、グループで続きの指定席を確保するのは残念ながら難しいほどの人気となっていることをご了承ください。
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祝祭の音楽

この夏の札幌のクラシック音楽界は、祝祭が重なりました。
6月、札幌交響楽団の定期演奏会が600回を数え、その演奏会場である札幌コンサートホールキタラは開館20周年。パシフィック・ミュージック・フェスティバルも開かれています。


「祝祭の音楽」とでも呼ぶべき名曲があります。

ヨーロッパでは、何といってもベートーベンの第9「合唱付き」でしょう。


ベルリンの壁が崩れた1989年、東西ドイツ、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連(当時)の6ヶ国からなる混成オーケストラがバーンスタインの指揮でベルリンの音楽ホールで高々と奏でた演奏は、今でも語り草です。この時、第4楽章は、本来の「フロイデ(Freude)=歓喜」を、「フライハイト(Freiheit)=自由」に変更して唄われたのでした。



さきごろ、ドイツのハンブルクで開かれたG20首脳会合でも、第9の演奏会が開かれ、各国首脳が鑑賞したそうです。

ハンブルクの新しいコンサートホールは「エルプフィルハーモニー」(エルプはエルベ川の語形変化)と呼ばれ、市のランドマークとして、古い倉庫を生かした形で建設されました。そのドキュメンタリーはNHK-BSプレミアムでも放送されましたが、初の予算を大きく上回る巨費がかかって市民の批判を集めた経緯も、きちんと紹介されていました。

困難を乗り切ったキーワードは、世界中の演奏家・音楽ファンが憧れるホールという、いわば「まちおこし効果」だったといいます。首脳をコンサートに招いたメルケル首相の狙いに、加盟国の結束とともに、新ホールのPRもあったことは間違いないでしょう。




「祝祭の音楽」にもどれば、第9のほかにも、マーラーの第2交響曲「復活」や、第8交響曲「千人の交響曲」、オペラではヴェルディの「アイーダ」、宗教曲ではバッハの「マタイ受難曲」などが、「ハレの音楽」としてよく採り上げられます。




こうした大規模な曲が思い浮かぶなかで、札響の第600回定期がモーツァルトの後期3大交響曲だったというのは、見事な独自性だったと言えると思います。また、キタラのバースデイのメーンはベートーベンの第7。選曲も演奏も素敵でした。

来年10月にこけら落としを迎える札幌市民交流プラザの新ホールの演目は「アイーダ」です。今から期待している人も多いことでしょう。


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写真はバースデイ・コンサート開演前のキタラ大ホール

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